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セミナー・イベント情報

社会的知能発生学研究会


サンダイヤルレポート No.108号 (2005年12月)

内容

1.けいはんな国際創造都市フォーラム

「北東アジア地域における研究交流の発展を目指して」 日時:2006年1月12日(木)13:30~16:30 会場:けいはんなプラザ交流棟3階「ナイル」

けいはんな学研都市の国際創造都市化に向けて、 国際的な共同研究の推進や人的交流・経済交流の促進を図るため、 中国のシリコンバレーとも言われる中国中関村科技園区にある清華大学の副学長をお招きしフォーラムを開催いたします。

2.公開シンポジウム「ユビキタス環境における実世界セマンティックス」

本研究会は2003年4月に発足し、趣旨に賛同する個人及び法人が会員となり、 その中に組織された幹事会が中心となって研究会活動を行っているものです。 株式会社けいはんなは、賛助会員としてまた事務局として当研究会を支援しています。 このたび、これまでの研究内容を発信する場としてシンポジウムを開催いたしましたので、 以下にその報告をいたします。

2005年11月22日(火)午前10時半から,けいはんなプラザにおいて公開シンポジウム 「ユビキタス環境における実世界セマンティックス」が開催されました. 本シンポジウムは,けいはんなWeb Semantics研究会活動の一環として主催するもので, 電子情報通信学会人工知能と知識処理研究会,人工知能学会セマンティックウェブとオントロジ研究会の協賛もいただきました. けいはんなWeb Semantics研究会の活動も3年を過ぎようとしていますが, Web Semanticsに関する研究は欧米を中心にますます盛んになっています. 関連する国際会議等も数多くなり,その参加者も年々増え続けています. このような中で,日本独自の流れとしてはユビキタス環境とそれを支える意味情報処理技術の融合が注目されています. 特に,けいはんな学研都市地区ではユビキタスコンピューティングに関する研究が盛んに行われており, 今回のシンポジウムではそれらに関する3件の研究講演と2件の招待講演が行われました。

最初の発表は本研究会のメンバー企業でもあるATRメディア情報科学研究所からの発表として、角康之氏による「ユビキタス・センサによる体験記録と解釈:実世界インタラクションのセマンティクスに向けて」でした. 角氏は現在,京都大学大学院情報学研究所の助教授としても活躍されています. 角氏らのグループでは、体験キャプチャシステムと称して、人間同士のインタラクションを記録する方法論の開発とインタラクション・コーパスの構築に関する研究を行っています.本講演では、インタラクションの意味解釈を目指す試みと、その応用システムとして、展示会ハイライトシーンの自動検出、ビデオサマリ、体験を演出するガイドロボットの試作等について紹介されました.2番目の講演は招待講演で,情報通信研究機構(NICT)けいはんな情報通信融合研究センターの上田博唯専攻研究員による「NICTユビキタスホームにおけるコンテクストアウェア・サービスの研究」 でした.NICTゆかりプロジェクトでは、多数の各種センサ,家電品,ネットワークロボットが統合された実験住宅(ユビキタスホーム)を構築し, これを用いたコンテクストアウェアなサービス提供の研究開発を進めています.本講演ではユビキタスホームのコンセプトの紹介と,一般市民の家族による長期生活実証実験に関する報告がなされました。

昼食をはさんだ後の3番目の講演も招待講演で,京都大学大学院 情報学研究科西田豊明教授による 「会話量子化によるインタラクションとコンテンツの緩やかな関連づけ」でした. 会話量子化とは,連続した会話の流れを,最小の談話的なまとまりをもつ「会話の粒」として分解することで, それらの集積・再構成により,別の会話の場で活用することが可能になります. 会話量子化のアプローチを有効に機能させるためには,会話のインタラクションとしての側面とコンテンツとしての側面を緩やかに関連付ける技術が必要になります. 本講演では,数多くの事例を通して,会話量子化に関する研究成果を紹介していただきました。

4番目の講演はメンバー企業の一つであるNECインターネットシステム研究所から柏谷篤研究部長による 「ユビキタス環境連携のための情報インタフェース/センシング」でした.いつでもどこでもコンピュータを利用できるユビキタス環境では, コンピュータと実世界が連携する様々なサービスを実現することができます. 本講演では,ユビキタス環境が進展してコンピュータ・実世界連携に進化していくロードマップを示すとともに, その中間過程に位置づけられる具体的研究活動として,携帯電話カメラで広視野/超高精細画像を撮影できる超解像モザイキング, 人やモノの位置を高精度検知するアクティブRF-ID検知などについて紹介していただきました。

5番目の講演もメンバー企業の一つであるNTTコミュニケーション科学基礎研究所から, 岡留剛グループリーダによる「実世界のモノとコトの把握:センサネットワークを利用した意味処理技術」と題する講演でした. 将来のセンサネットワーク環境を想定した場合,実世界環境にあるモノが何であるか, あるいは環境で起こる出来事が何であるかを自然言語の語彙で表現できることは重要となります. 本講演では,モノに添付されたセンサノードが発するデータから, オントロジカルな実世界知識を用いて推論する意味処理技術の研究開発を行なっているプロジェクトの紹介をしていただきました。

本シンポジウムではこれらの講演の後,NICT,ATR,NTTコミュニケーション基礎科学研究所への見学会が行われました. ユビキタスホームをはじめとして,先の講演で語られた研究内容を実際に体験することができ, より深く理解することが可能になりました.見学会参加者には多くの学生も含まれていましたが, 大変貴重な経験になったと聞いています. 見学会の後には再び,けいはんなプラザに戻り,懇親会がもたれました. NTTコミュニケーション科学基礎研究所の片桐所長からご挨拶をいただき, 講演者も交えた大変充実した交流のときとなりました。

今回のシンポジウムでは130名を超える参加者があり,盛況なイベントとなりました. 単なる講演会だけでなく,見学会も開催できたことは相乗効果となって大変有益であったと感じています. けいはんな学研都市地区にはレベルの高い研究機関が集中しており,その研究活動を実感することができました. ここから日本全国,さらには世界に向けて,新たなWeb Semantics技術に関する情報発信ができればと期待しています. 最後に,今回のシンポジウムではNTTコミュニケーション科学研究所のスタッフの方にその準備, 実施の上で大変お世話になりました.また見学会のためには各研究所の方々に大変な準備をお引き受けいただきました. この場を借りましてお礼申し上げます。
(文責:関西学院大学 北村 泰彦)

3.「けいはんな・ITコミュニティー技術シーズ発表会」開催報告

また、上記シンポジウムと併催で、けいはんなITコミュニティ技術シーズ発表会が開催されました。 いかに開催報告いたします。

けいはんなITコミュニティー事業(以下「KITC事業」という)推進本部では、 その事業の一環として、去る11月22日(水)けいはんなプラザにおいて「KITC技術シーズ発表会」を実施しました。 当日は、IT関連企業関係者、コーディネータ等、約50名の参加を得ました。 KITC事業は、11件の新事業の創出を大きな目標の一つに掲げていますが、 これの達成のためには各般で活躍をしているコーディネータ、アドバイザーの支援等が不可欠であり、 今回の発表会は企業から今一番売りたい商品・技術を提案し、コーディネータ等からいろんな意見やアイデアをいただき、 市場への展開、商品等のブラッシュアップを図っていくことを目的に実施しました。 こうした趣旨を踏まえ、以下のIT関連企業3社から発表が行われました。

○カゴヤ・ジャパン(株)
顧客のWEBサイト公開用スペースを貸与する「ホスティング業務」や、顧客のサーバーを預かる「ハウジング業務」等の紹介。

○インフォテック(株)
通信相手の装置や計測器の代わりにメッセージの送受信などの通信を行い、 通信テストを可能にするソフト「DeSim」の紹介。

○(株)クレアリンクテクノロジー
DVD1枚分のデータを約7分で配信できる高速ファイル配送サービスソフト「デジ急便」の紹介。

発表会場はもとより、発表会終了後開催された交流会で、コーディネータ等から活発なアドバイス、 発表者を交えた意見交換がなされ大変有意義な会となりました。
(文責:KITC事務局 牧野 誼)

※ KITC事業の詳細につきましては、こちらをご覧ください。

4.第15回社会的知能発生学研究会(Sociointelligenesis)開催報告

平成17年10月29日(土)~30日(日)株式会社けいはんな主催の標記研究会が開催されました。

今回は外部講師2名及び内部講師2名による講演と,「人間の賢さ」に関する研究討論(賢さセッション)を行った. 外部講師の1人目として,慶應義塾大学 文学部教育学専攻の安藤寿康氏に, 「人間行動の遺伝学: 双生児研究から」という演題でご講演いただいた. 今回の講演では,一卵性双生児と二卵性双生児の比較に基づいたデータから,遺伝と環境の要因を可能な限り分離しようとする試みや, 身体的・病理的形質,心理・行動的形式の違いについて検討された. 特に焦点が当てられたのは,作動記憶とパーソナリティの遺伝規定性であった. また,近年,パーソナリティ理論の一つとして広く知られる「ビッグ5」の遺伝規定性について調べた双生児研究の結果として, 5つの要素が遺伝によって規定される可能性が高いことなどが示された. 今回の講演では,遺伝の基礎に関する解説もわかりやすくなされ,参加者のより深い理解に結びついた. 参加者を含めた討論も活発であり,行動遺伝学の目指すところは何か,教育における親の環境的・遺伝的役割をどう考えるべきなのか, などについて議論された。

次に外部講師の2人目として,理化学研究所 脳科学総合研究センターの中谷裕教氏に,「多義図形観察時の知覚交替に関連した脳波活動とその多様性」 という演題でご講演いただいた. 中谷氏は,視覚情報の解釈に関連した脳活動を調べることを通じて,脳の情報処理機能を解明することを目指している. 具体的には多義図形観察時の知覚交替現象に関連した脳波活動を解析する手法を開発している. 多義図形とは,複数の解釈が可能な図形のことを指し,視覚系の心理実験で古くから用いられてきた. 知覚交替現象とは,多義図形がある一定期間提示されると,図形の見えが複数の解釈の間で自発的に変化することである. 知覚交替を意識的に検出した際にボタン押しをする課題時の脳波活動について,独自手法で解析を行ったところ, ボタン押しの前に認知などに対応するガンマ波帯域の脳波の同期現象が現れ, 同一の知覚現象に伴って4種類の同期活動パターンが観察されたことが報告された。

夕食の後のイブニングセッションでは内部講師の1人目として,はこだて未来大学の中島秀之氏に「構成的情報学の方法論に向けて」という演題でご講演いただいた.これまでの科学では,客観的外部観測者の視点を採り,システムの外から現象を客観的に記述しようと試みた.これに対し,構成的情報学においては,主観的内部観測者の視点を採り,システムの一部から現象を主観的に記述する方法が,方法論として確立されうるのではないかと述べられた.そして,構成的手法について,還元的手法と対比しながら考察された.仮説を検証する過程は還元的だが,現象の観察から仮説を形成する過程は構成的である.建築や機械のように,作ってみなければ本当の仕様が分かりづらい性質を持つものは,仕様記述と実装, 解析を何度か繰り返す方法が採られる.構成的情報学においては,この一連の手順をどのように行うか,複数回繰り返すことにより,どれだけ目的とする機能に近づくことができるかを,評価基準としてはどうかと提案された。

内部講師の2人目として,奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科情報生命科学専攻の柴田智広氏に,「ヒトの統計的推定能力」という演題でご講演 いただいた. 柴田氏の講演のテーマは,当研究会の大きなテーマである「ヒトはどこがどう賢いのか」に関連したものであった. 本講演では,適切な統計的情報処理を賢いと仮定し,ヒトは統計的に賢い情報処理をしているのか, できるのか,ということに焦点が当てられた.具体的には,視覚運動学習における規則性の 発見,ヒトの視覚認識や視覚運動におけるベイズ推定性,虎問題に代表される意思決定場面における最適性について深く検討された. 議論も活発であり,低次な処理や高次な処理を要求する課題におけるベイズ推定の可能性や, 次元を連続的に捉えることの難しさに関する討論がなされた。

今回の賢さセッションは,まず講師の中谷氏,オブザーバーの杉田氏・柳井氏 に,ヒトのどの側面が賢いと思うかを述べていただいた.中谷氏は環境変化に 適応できる点やコミュニケーションできる点を挙げられた.杉田氏は部分的な 情報から全体を理解する能力を挙げられた.柳井氏は,一般化,特殊化,自己, 他者という4つの要素で賢さは捉えられるという考えを述べられた.続いて 瀬名氏から自分ができないこと(例えば数学や将棋)ができる人は賢いと思う と発言があった.数学者やプロの棋士における「答えはこれしかない」という 直感やひらめきの計算論の構築は,前述の「特殊化」とも関連して大変重要で あるという問題意識を共有して本セッションは幕を閉じた。
(報告者:慶應義塾大学 梅田 聡・東京大学 大武美保子・奈良先端科学技術大学院大学 柴田智広)